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2022.09.03 (Sat)

街並み

エッセイ教室ー課題「駅に立つ」


もう十年以上も前だ。
母校の大学祭に、久しぶりにクラブ仲間と行った。

通い慣れていたはずの通学路は、
結婚してから住んでいる所からだと勝手が違って、
大学の最寄り駅に着いたのは集合時間ギリギリだった。

卒業してから二十数年。
同期の女子とは数年に一度ほど会っていたが、
先輩や男子の中には卒業以来の人もいた。
少し緊張しながら、集まっている塊に向かう。

「のんこ〜」
懐かしいあだ名で呼ばれると、一瞬で時が巻き戻る。
側から見ると、
あだ名で呼び合っている中年男女の集合体って異様だったと思うが、
当の本人達はすっかり若返って、
ハイテンションでバス乗り場に向かった。

駅前は、すっかり変わっていた。
地方都市の雑多な諸々がきれいさっぱり流された感じ。
二十年以上経ったのだもの。致し方ない。
車窓から外を眺めながらおしゃべりは尽きない。
バスは、思っていた感覚よりも随分と早く大学前のバス停に到着した。
数年前に、校舎が駅寄りの工場跡地に移転したのだ。
近代的に生まれ変わった大学を見上げる。
おしゃれな外観で素敵だなと思う。

でも、それだけだった。
想い出がないってことは、こう言うことなのだなと改めて思う。
とりあえず、後輩たちの出店を覗きに行く。
彼らの親世代の我ら。
息子や娘のような後輩たちを見て、一瞬で時が今に戻ってしまった。

せっかくだから、
大学のあった場所に寄ってみようということになった。
バスを二駅ほど乗る。
道は広く舗装されていて、みんなでよく通った喫茶店もなかった。
バス停から少し歩いた場所に、大学跡地の石碑が立っていた。
そのこぢんまりとした石に時を突きつけられようで、
みんなでしんみりしてしまった。

帰りは、ひとつ向こうの駅まで歩くことにした。
あの頃、お金の乏しかった私たちは、
住宅街を抜けて駅まで続く川べりの道をよく歩いた。
遠いあの日、
二十分ほど掛かる道のりで私たちは何を話していたのだろう。

住宅街の入り口で、思わず声が上がる。
変わっていないのである。
家々は建て替えられているのかもしれないが、
緑の多い街並みはそのままで、
近道で抜けていた公園は時が止まったままのようだった。
当時付き合っていた彼と、手を繋いで帰った道。
風の匂いがした。

駅に近づくと、みんなの顔がますます輝き出した。
普通電車しか停まらないその駅前は、一昔前の姿そのままだった。
潰れそうだった居酒屋もその風情のままで、
線路の向こうに見える大きなボーリングのピンのさびれ感も同じだ。

私たちは、明日からまた、ブックバンド抱えて大学に通う。
なんの違和感もなく。
街並みに魔法をかけられているようだった。





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